難削材加工のバイブル

航空機製造

航空エンジンに多用される耐熱合金は一般に難削材と呼ばれ、その加工条件を設定するために、部品加工メーカーは多くの時間と費用をかけています。
これは、航空機部品の製造では、一度加工条件を設定したら、その条件で”工程凍結”され、そこからの変更は、全て、変更管理の対象となることから、変更が容易ではないことも影響しています。
そのため、最初の加工条件設定時に多くの条件での試験を行い、現在の設備等のもとで、ベストの加工条件を見つけようとしますから時間がかかります。
また、耐熱合金は他の材料に比べ、材料費が高額なため、試験材料を手に入れるだけでも多額の費用がかかります。
過去に同じ種類の難削材の加工経験があれば、その加工条件データをもとに、加工試験をすすめれば、条件設定の時間短縮、費用削減が図れます。
しかし、過去に加工したことのない合金であったり、生産性の向上を目的に最新設備を導入したりすれば、やはり、加工条件の設定には時間と費用がかかります。
そこで、今回、ご紹介しますのは、元三菱マテリアルの研究顧問で現在、難削材切削技術研究所の代表である狩野勝吉氏が執筆された近著「データで学ぶ 超耐熱合金切削の基礎技術とトラブル対策」です。

この本は工業専門誌「機械の研究」に2019年2月から2020年12月まで連載していた同名の講座の内容が一冊にまとめられたものになっています。
豊富なデータが写真とともに紹介されていて、難削材加工における今日現在の情報が得られるとともに、加工トラブル対策も豊富で、トラブルシューティングにも役立ちます。
また、氏の著作は加工データのまとめ方が、「何を削ったのか」「何で削ったのか」「どのように削ろうとしたのか」「結果はどうなったのか」で一貫しており、非常に理解しやすい記載となっています。
このまとめ方は、これから、自社内で加工条件データの蓄積を考えられておられる会社の若きエンジニアには参考になると考えます。
ちなみに、狩野勝吉氏は過去に「難削材・新素材の切削加工ハンドブック」という全508ページの大著をお一人で著されており、まさに”難削材加工の巨人”と呼ぶにふさわしい研究者だと思います。
最後に、アイザック・ニュートンの言葉で有名になった、私が常に心がけている言葉で締めます。
”巨人の肩の上に立つ”

最後まで、お読みいただき、ありがとうございます。次回も近日中にアップします。

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