航空機産業の産業構造の新しい考え方

航空機製造

新型コロナウイルスにより,大打撃を受けた,航空業界.しかし,世界中でワクチン接種が加速されていくなかで,明るい兆しが出てきています.
米国の国内線はいち早く回復し,デルタ航空,アメリカン航空は2021年4~6月期業績は黒字に転換しました.日本の航空会社は依然最終赤字を継続していますが,それも時間の問題だと思います.あと数ヶ月もすれば,日本のワクチン接種率もかなり高くなり,すると,国内移動が増え,さらに,海外への移動もコロナ禍前の水準まで戻ると予想することは極めて自然だと考えます.

一方,日本の製造業の大黒柱の一つでありであり,巨大な市場を形成している自動車産業は大きな転換期を迎えています.電気自動車へのシフト加速により,市場の大幅縮小が懸念されています.先日のホンダの早期退職制度に2000人以上が応募したニュースはその序章のように感じられます.

すると,俄然,熱を帯びてくるのが,航空機産業への新規参入によるリスク回避の動きです.新型コロナ以前には,常に右肩上がりの市場だったこともあり,全国に約50ヶ所の航空機クラスタが形成されています.これらの航空機クラスタの活動が以前のレベル以上に戻ることが予想されます.

では,その航空機産業の産業構造はどうなっているのでしょうか?それが,本ブログで皆さんにお伝えしたいことです.
よく皆さんが目にする産業構造の図は図1のようなものだと思います.

図1 航空機・エンジンのサプライヤー構造概念図
(出所:本邦航空機産業の過去・現在・未来 ~航空機産業の最前線と当行の取り組み~,日本政策投資銀行,2016年7月)

OEMがトップにいて,その下にティア1,さらにその下にティア2,ティア3とつながる構造.この構造は航空機産業だけでなく,自動車産業も同じような構造になっていると思います.
もちろん,この図は正しく産業構造を表していると思います.しかしながら,航空機産業に新規参入しようと考えられている企業の皆さんにはあまり役には立ちません.

そこで,航空機製造メーカーに33年間勤務し,世界中の部品製作サプライヤーを探し回った私だからこそ描ける世界初の航空機産業の産業構造図を図2に示します.この図はエンジン製造側で作成しています.

図2 航空機エンジン製造の産業構造 
  • エンジンプライムメーカー(OEM):GE,RR,P&Wなど
  • リスク・アンド・レベニュー・シェアリングパートナー(RRSP):IHI,川崎重工,三菱重工航空エンジン,MTU(独),Snecma(仏)など
  • 部品製作サプライヤー:Hanwha(韓),GKN(瑞),AeroEdge(日)などOEMやRRSPから直接部品製作を受注している企業

その外側に,数多くのJISQ9100(AS9100)認証取得済のメーカーが存在し,更にその外側には,航空機産業に未参入ですが参入を考えている一般部品製作メーカーが多数存在します.

点は企業を表し,点と点を結ぶ線は部品製作契約を表します.あくまでもこの図はモデル図ですが,全ての線を記入すると理解できなくなるので,本当にごく一部だけの線を記入して,あとは線を省略しています.

この図で,皆さんにご理解いただきたいのは,エンジンプライムメーカーとリスクシェアリングパートナーと部品製作サプライヤーまでのネットワークで多くの部品が製作され,ごく少数がその外側で製作されていることです.

このネットワークは,ネットワーク科学の分野では,リッチクラブ現象と呼ばれ,そのネットワーク内にいる企業間での取引がどんどん増加していく現象です.このネットワークに入るには高い参入障壁があります.

しかし,ある企業がその参入障壁を超え,エンジンプライムメーカーもしくはリスクシェアリングパートナーからの部品製作の契約を得ると,その企業は他のエンジンプライムメーカーやリスクシェアリングパートナーから見えるようになり,増産時または新規エンジン開発時に新たな契約が得られるチャンスが出てきます.そして,どんどん線が増えていくことになります.

従いまして,現在➀のステージの企業の皆さん,または②のステージの企業の皆さんは,是非とも③のステージに登り,ネットワークの中に入り,世界中のエンジンプライムメーカーやリスクシェアリングパートナーから見えるようになっていただきたいと思います.

そんなことは,既に理解している.どうすれば,ステージを登れるかがわからないから苦労するんだという声が聞こえてきそうです.

既に,多くの航空機クラスターでは新規参入に対し,どう取り組むのかという勉強会も開かれ,皆さん真剣に学ばれています.

私は,それに対し,ネットワーク科学の観点から考えています.では,具体的にはどう取り組むのかについては,次回以降のブログで説明していく予定です.

次のブログまで待てない.早く知りたいという方は,以下のお問い合わせにてご連絡ください.

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